如春夜夢

発達障害児の子育て記録です。

母の日

母の日は幼稚園でお母さんの絵を描いて持ってくる。
今年もありがたく頂戴した。
あまりにも上手なお母さんの顔を。


うちの幼稚園では絵や工作において自由画を制作することがほぼない。
同じ構図で同じ色で同じ描き方で先生の指導に従って全員が決められた通りに絵を描く。
出来なければ先生が手伝う。
壁に貼り出された絵は皆同じである。



それについて親たちの反応は賛否両論であるが、どちらかというと否の方が多い。
下手でも子どもたちが子どもたちなりに考えてがんばって描いた絵の方がよいというのである。



私もそう思っている。
私はたとえお化けのような自分の顔の絵や単なるぐるぐるの殴り書きを母の日にもらっても一向に構わない。



しかし、うちの子は普通の子と少し事情が異なる。
彼は極端に手先が不器用なのと表現が苦手なため絵は端的に物凄く下手だ。


大好きな電車の絵を描くのでも
まず短い縦の線を引き、
次にそれより少し長い横の線を引き、
長方形を描いて、
それの下の辺に丸を四つ描いて車輪にしてみよう。
長方形の中に四角をいくつか描いて窓にしてみよう。

というように細分化して手順を教えてあげないと全く描けない。



また、「遠足で楽しかったことを描きましょう」「運動会の思い出を描きましょう」といった課題だと、
何を描けばよいのかわからないので本当に紙が真っ白になる。



そういう子にとって、誰にでも一定のレベルの絵を描かせる幼稚園の方針はいいのかもしれない。



親がいうのもあれだがうちの子は不必要に賢いので
自分がどうしても他の子のようには絵が描けないことに気付いている。
他の子のように描けるべきなのに、と思っている。
そして一生懸命やれば下手でもいいんだ、という考え方は彼の中にはない。
彼は出来ない自分に傷ついているだろう。



だから、彼の精神の安定を考えるなら、いいやり方なのだろうか、と
複雑な思いで明らかに先生の手がくわえられた上手すぎる母の絵を見ていた。



前に近所のスーパーに幼稚園経由で飾られた「夏休みの思い出」の絵は一人だけ真っ白だった。
つい先日英語教室でやってきた塗り絵は動物たちが全部青色でぐちゃぐちゃに塗り潰されていた。



そのときの息子の気持ちを思った。
それでも私は息子が自分で描いた方がいいけれど、
一生懸命やれば下手でもいいのよ、なんていう慰めは、
どうやっても出来ない彼の心を何も救いはしない。


あ、もちろん、
母の日の絵を受け取ったときにはめちゃくちゃほめちぎりましたよ。