如春夜夢

発達障害児の子育て記録です。

期限

上の子。

 

彼は見通しの立たないことは嫌いである。

なんでもきっちりと予定を立てて期限を決めるのが好きである。

期限がはっきりしていると安心する。

 

先日、(彼にとっての)祖父が遊びに来た。

彼は祖父のことがとても好きであるが、祖父にまず言ったことは

「おじいちゃんいつ帰るの?」

である。

悪意はない。本当に純粋に「いつ帰るのか」ということが知りたいだけだ。

それがわかっていると彼は安心するからだ。

しかし、一般的な感覚においてはそれはまるで帰るのを催促しているかのようだ。

世間のルールではそういうことを言うものではないのだ、ということを教えなければならない。

 

また或るときは、彼の父(私の夫)がお気に入りの音楽を聴いていた。

彼はまた、

「いつ終わるの?」

と言ってしまった。

夫は「そんなに嫌なのか」と不快の念を露わにした。

そうではない。

ただいつ終わるのか、期限が知りたいだけなのだ。

そうじゃないんだよ、と私は夫に対して取り成さなければならない。

一方彼は何故父の機嫌が悪くなったのかわからないだろうから、彼に対してもそういうことは言うものじゃないんだ、と取り成さなければならない。

 

ああ、実の父親にだってわかってもらえないんだから、

これから彼はどれだけ誤解を受けるんだろう。

世間一般の感覚、それが正しくて、彼が間違っているというわけではない。

ただ数の多少であって優劣ではない。

だけど、多数に合わせないと生きにくいだろう、それが現実だ。

 

彼に尋ねられたことがある。

数は何処まで大きくなるの?一番大きい数は何?

その逆も。

上限は無いのだ、何処までも大きくなるし、また、下限も無く、限りなくゼロに近づいていくだけなのだ。

そう説明したら、彼はひどく泣いた。

果てしなく大きくなり続ける数、期限はない、何処までも何処までも続く数。

それは彼にとってどれ程恐ろしい深淵で、闇であるのだろう。

彼にしか見えない闇だ。

 

彼に見えているものは私には見えない。

だけど、どうにかして、闇から目を逸らす方法を教えてあげたい。

少しでも安心して生きられるように。

難しい。